218 研究系及び研究施設の現状
加 藤 政 博(助教授)
A -1)専門領域:加速器科学、放射光科学、ビーム物理学
A -2)研究課題:
a) シンクロトロン放射光源の研究 b) 自由電子レーザーの研究
c) 相対論的電子ビームを用いた光発生法の研究
A -3)研究活動の概略と主な成果
a) かねてより提案していたUV SOR の高度化計画は2002年度に予算化された。高度化に必要な加速器装置類の製作は 予定通り2003年3月末までに完了し,4月より加速器の改造を開始した。改造作業は順調に進み予定通り3ヶ月で 完了した。7月より試運転を開始,7月14日にビーム蓄積に成功した。高度化されたUV SOR(UV SOR -II)は以前の2 倍に相当する計6台までのアンジュレータが設置可能となり,同時に,ビームのエミッタンス(空間広がりと角度広 がりの積)も以前の約1/6となった。これにより最新の第3世代光源と競争可能な高輝度放射光を多くのビームライ ンに供給できるようになった。
b) 従来の UV S OR では偏向電磁石からのシンクロトロン放射の利用が中心であったが,UV S OR -II では高輝度のアン ジュレータが光源の主力となる。光源リングの高度化の一環として,老朽化したアンジュレータ1台と超伝導ウィ グラ1台を撤去し2台の真空封止型アンジュレータを導入した。これらは旧来のアンジュレータでは困難であった 100 eV を超えるエネルギー領域の高輝度放射光を生成することが可能である。アンジュレータの制御系も新たに構 築し,これまでUV SOR では実現されていなかった,利用側からの放射光エネルギーの随時変更が可能となる。現在, 立ち上げ調整の最終段階に入っている。
c) 2000年以降,自由電子レーザーの実用化を目指して高出力化,高安定化に取り組んできたが,その結果,平均出力は 1 W を超え,2時間を越える連続発振も可能となった。自由電子レーザー光とシンクロトロン放射光を組み合わせ た原子・分子の二重励起実験にも成功した。光源リングが高度化され電子ビームが高品位化されたことで,より短波 長域での発振が狙えるようになった。12月には可視域であるがUV SOR -IIとなって初めてのレーザー発振に成功し た。
d) レーザーと電子ビームを相互作用させることで電子バンチの一部に 1 ピコ秒程度あるいはそれ以下のディップ構 造を作り出すことができる。このようなディップ構造は遠赤外領域においてコヒーレント放射する可能性がある。 このような手法でUV S OR において生成可能なコヒーレント遠赤外放射の強度,波長スペクトルの計算を進めてき た。現在予備的な実験を行うための準備を進めている。
B -1) 学術論文
M. HOSAKA, M. KATOH, A. MOCHIHASHI, J. YAMAZAKI, K. HAYASHI, Y. TAKASHIMA and H. HAMA, “Q- Switching Operation of UVSOR-FEL,” Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. A 507, 289–293 (2003).
研究系及び研究施設の現状 219 B -7) 学会および社会的活動
学会の組織委員
加速器科学研究発表会世話人 (2001- ). 加速器学会設立準備委員会委員 (2003- ). 学会誌編集委員
放射光学会誌編集委員 (2000-2002). その他の委員
日中拠点大学交流事業(加速器科学分野)国内運営委員会委員 (2000- ). 佐賀県シンクロトロン光応用研究施設・光源装置設計評価委員 (2001- ).
むつ小川原地域における放射光施設整備に係る基本設計等調査評価会(加速器)委員 (2001- ).
B -8) 他大学での講義、客員
高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所 , 客員助教授 , 2000年 4 月 - .
C ) 研究活動の課題と展望
UV SOR 加速器群は予定通りのスケジュールで高度化改造され,2003年7月から高度化された光源リングUV SOR -IIの運転 を開始し,9月より利用実験も再開した。既にマシンスタディの段階では目標とした運転条件でのビーム入射・蓄積が問題な く行えることを確認しており,現在,ビーム性能の測定を進めているところである。当面の課題は,電子ビームの高輝度化によっ て引き起こされるT ouschek効果(ビーム内の電子同士の散乱により電子が失われる現象)の抑制である。これに対処するた めに,2005年春に高周波加速系の更新を行う予定であり,現在設計を進めている。更新によりビーム寿命は現在の数倍に改 善される見込みである。
自由電子レーザーに関しては,実用化に向けた技術開発を続けてきたが,光源リングの高度化により,従来以上に短波長領 域での発振の可能性が出てきた。今後は紫外から真空紫外領域へと段階的に発振域を移し,短波長域での高出力化,高 安定化を目指して研究開発を続けていく。またこの波長域での利用実験も推進していく。具体的には円偏光レーザー光の 生体物質への照射実験,放射光との同期性を利用した原子分子の二重励起実験を予定している。
遠赤外領域でのコヒーレント放射の生成は,加速器本体に大幅な改造を加えることなく実現できることから,基礎実験を2004 年初頭に実施する予定である。